異常/正常という言葉に惑わされる人々
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty/com/blog/2007/05/post_7cdc.html
http://d.hatena.ne.jp/todesking/20070502/1178090121
http://d.hatena.ne.jp/solar/20070501#p1
これらのエントリは、時系列的には上の順番とは逆順に書かれている。
問題になっているシステムは、要するに「雑踏を映し出す動画を処理して普段と違うことが起きたらそれを知らせる」という機能を持っているだけだと理解した。監視カメラの映像から、人間様が確認するまでもない日常の風景を無視し、見るべき映像のみをふるい分けてくれるシステムというわけだ。
この「普段と違うこと」を「異常」と名付け、その反対だからそうでない場合を「正常」とするのは、エンジニア的な言語感覚からすると至って普通のことだ。ここでいう「異常」というのは、一般世間で流通している「異常」という言葉とは意味が違う。
ここでは「異常」は「普段と違うこと」以外の意味を持っていない。プログラムを組む時に、最初に想定した処理の流れを「正常系」、そうではない処理の流れを「異常系」と名付けるのと同じ感覚だ。コンピュータが「異常系」を処理することは往々にして起きることだが、だからといってその時のコンピュータが異常動作をしているわけではないし、正常系しか組まれていないようなプログラムは、一般的に使い物にならない。
ところで、コンピュータというのは常識を持ち合わせていないので、こういう常識を基礎とした抽象的な判断を伴う仕事を不得意としている。
例えば、非常に簡単な喩えで申し訳ないが、一日中稼働している屋外の監視カメラの映像がなんだかだんだん暗くなってきて、起動時とは大幅に異なる状態になってしまったら、コンピュータには「異常」が起きたとしか判断できないはずであるが、人間が見れば「日が暮れた」だけのことでしかなかったりする。そういう『「正常」とは一体どういう状態のことなのか?』という定義をいちいちしてやらなければ、コンピュータはまともに仕事をしてくれないのである。
しかしながら、長時間に渡って不毛な作業を不眠不休で行う(何も起きない平和な街の風景をずっと見守り続ける、とか)というのは、まさしくコンピュータ(というか、機械一般)に期待される仕事である。よって、常識を基礎とする抽象的な判断を、いかにしてコンピュータが得意とする仕事に落とし込むかがカギとなる。
統計的な処理を行うことで「正常」すなわち「普段起きていること」の範囲を定め、そこから逸脱するか否かで「普段と違う」という判断を行っているというところが、このシステムのミソであろう。
閑話休題。
繰り返すが、このシステムにおける「異常」というのは「普段と違う」という意味でしかない。なので、それらをそのまま直接警察への通報に結び付けてしまえば、問題が起きまくるのは至極当然の結果である。二番目のURLのエントリではそれを踏まえた上(!)で「何が問題なのか」と言っているが、最初のエントリでの指摘の通り、問題は大ありだろう。
しかし、すでに記事が消滅してしまっているようなので引用でしかわからないが、そもそも、元の東京新聞の記事では、監視カメラを管理している団体が間に入ることになっているようではないか。よほどひねくれて読まない限り、まずはその団体の人間が「異常」と判定された映像を確認して、通報するべきかどうかの判断を行うことになっていると読み取れる。つまりはこのシステムから直接警察に通報が行くなどということはないと判断できる。最初のエントリは二番目のエントリに引きずられて(二番目のエントリは最後のエントリに引きずられて)、無意味な想定の上で話を進めてしまっている。
上で書いたとおり、このシステムについての説明文では「正常」「異常」の意味が(暗黙のうちに)非常に限定されている。よって最後のURLのエントリでは、それを勝手に拡大して変な勘繰りをしているだけにしか見えない。「背筋を伸ばして通行」とか「路上喫煙」とかの単語がそれを端的に表しているだろう。
何か集客力が非常に高いイベントがあって、普段は普通に歩ける程度の人ごみが満員電車のごとき状態になったとすれば、このシステムにとっては「異常」だ。普段からばんばん路上喫煙や煙草のポイ捨てが行われていれば、路上喫煙や煙草のポイ捨てはこのシステムとっては「正常」だ。ここでの「異常」「正常」の意味はただそれだけのことなのだ。コンピュータは価値判断など行わないし、たいていの技術者は政治的判断を用語の取捨選択に絡めない。
というわけで、これら三つのエントリは、三者三様に「正常」と「異常」という言葉に惑わされてしまっているように私には思える。
というか、君たちコンピュータに夢見すぎ。みんなコンピュータの阿呆さ加減をもっと知るべきだと思います。
http://d.hatena.ne.jp/todesking/20070502/1178090121
http://d.hatena.ne.jp/solar/20070501#p1
これらのエントリは、時系列的には上の順番とは逆順に書かれている。
問題になっているシステムは、要するに「雑踏を映し出す動画を処理して普段と違うことが起きたらそれを知らせる」という機能を持っているだけだと理解した。監視カメラの映像から、人間様が確認するまでもない日常の風景を無視し、見るべき映像のみをふるい分けてくれるシステムというわけだ。
この「普段と違うこと」を「異常」と名付け、その反対だからそうでない場合を「正常」とするのは、エンジニア的な言語感覚からすると至って普通のことだ。ここでいう「異常」というのは、一般世間で流通している「異常」という言葉とは意味が違う。
ここでは「異常」は「普段と違うこと」以外の意味を持っていない。プログラムを組む時に、最初に想定した処理の流れを「正常系」、そうではない処理の流れを「異常系」と名付けるのと同じ感覚だ。コンピュータが「異常系」を処理することは往々にして起きることだが、だからといってその時のコンピュータが異常動作をしているわけではないし、正常系しか組まれていないようなプログラムは、一般的に使い物にならない。
ところで、コンピュータというのは常識を持ち合わせていないので、こういう常識を基礎とした抽象的な判断を伴う仕事を不得意としている。
例えば、非常に簡単な喩えで申し訳ないが、一日中稼働している屋外の監視カメラの映像がなんだかだんだん暗くなってきて、起動時とは大幅に異なる状態になってしまったら、コンピュータには「異常」が起きたとしか判断できないはずであるが、人間が見れば「日が暮れた」だけのことでしかなかったりする。そういう『「正常」とは一体どういう状態のことなのか?』という定義をいちいちしてやらなければ、コンピュータはまともに仕事をしてくれないのである。
しかしながら、長時間に渡って不毛な作業を不眠不休で行う(何も起きない平和な街の風景をずっと見守り続ける、とか)というのは、まさしくコンピュータ(というか、機械一般)に期待される仕事である。よって、常識を基礎とする抽象的な判断を、いかにしてコンピュータが得意とする仕事に落とし込むかがカギとなる。
統計的な処理を行うことで「正常」すなわち「普段起きていること」の範囲を定め、そこから逸脱するか否かで「普段と違う」という判断を行っているというところが、このシステムのミソであろう。
閑話休題。
繰り返すが、このシステムにおける「異常」というのは「普段と違う」という意味でしかない。なので、それらをそのまま直接警察への通報に結び付けてしまえば、問題が起きまくるのは至極当然の結果である。二番目のURLのエントリではそれを踏まえた上(!)で「何が問題なのか」と言っているが、最初のエントリでの指摘の通り、問題は大ありだろう。
しかし、すでに記事が消滅してしまっているようなので引用でしかわからないが、そもそも、元の東京新聞の記事では、監視カメラを管理している団体が間に入ることになっているようではないか。よほどひねくれて読まない限り、まずはその団体の人間が「異常」と判定された映像を確認して、通報するべきかどうかの判断を行うことになっていると読み取れる。つまりはこのシステムから直接警察に通報が行くなどということはないと判断できる。最初のエントリは二番目のエントリに引きずられて(二番目のエントリは最後のエントリに引きずられて)、無意味な想定の上で話を進めてしまっている。
上で書いたとおり、このシステムについての説明文では「正常」「異常」の意味が(暗黙のうちに)非常に限定されている。よって最後のURLのエントリでは、それを勝手に拡大して変な勘繰りをしているだけにしか見えない。「背筋を伸ばして通行」とか「路上喫煙」とかの単語がそれを端的に表しているだろう。
何か集客力が非常に高いイベントがあって、普段は普通に歩ける程度の人ごみが満員電車のごとき状態になったとすれば、このシステムにとっては「異常」だ。普段からばんばん路上喫煙や煙草のポイ捨てが行われていれば、路上喫煙や煙草のポイ捨てはこのシステムとっては「正常」だ。ここでの「異常」「正常」の意味はただそれだけのことなのだ。コンピュータは価値判断など行わないし、たいていの技術者は政治的判断を用語の取捨選択に絡めない。
というわけで、これら三つのエントリは、三者三様に「正常」と「異常」という言葉に惑わされてしまっているように私には思える。
というか、君たちコンピュータに夢見すぎ。みんなコンピュータの阿呆さ加減をもっと知るべきだと思います。
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