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r-fukai's Diary ausf blogger

金曜日, 4月 20, 2007

環境の話をしているのに健康の話で混ぜっ返す

http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1596797
えーと、ガソリンの代わりにエタノールを使うのは、二酸化炭素排出量を減らすためであって、それ以外の目的は特に語られていないはずだ。
そして、二酸化炭素の排出量が減ったからといって、短期的なメリットは特に存在しない。地球温暖化が止まるかどうかも実はわからない。
また、生物由来エタノールを使ったからといって、劇的に二酸化炭素排出量が減ることもない。生物由来エタノールは、生成サイクル中に生物の炭素固定過程が含まれるために、環境中の二酸化炭素量に対して中立(=増やしも減らしもしない)なのである。減るのは、エタノールが使われなかった場合に排出されたであろうガソリンによって増えたと予想される分の二酸化炭素だが、ややこしいので一般向けには「二酸化炭素排出量削減につながる」と言っているのだろう。
で、リンク先の議論では、人間の健康に直接被害が及ぶ物質が、ガソリンを使う場合よりも増える(増えるのであって、ガソリンを使っていればなくなるわけではない)のでエタノールは良くない、という論が展開されている。そして、本気で二酸化炭素排出量を削減したいならば、ガソリン駆動の自動車を風力発電主体の電気自動車で代替せよとも。
阿呆か。この論文の筆者は本気でそんなことが可能だと考えているのか。こういうのを絵に描いた餅というのだ。
生物由来エタノールが、全体のほんの少しの量だけであってもすでに導入され始めているのは、これまで整備されたインフラからの接続性が非常に高いからに他ならない。もちろん、完全にそのままというわけにはいかないのだが(一例としては、エンジンへの燃料供給経路上にエチルアルコールに侵されてしまう部品が使われていることがあるとのこと)、現状のインフラがほとんどそのままで使える。自動車産業に従事している人間は、ガソリンの一部がエタノールに置き換わろうとも、そのまま糊口をしのぐことができるだろう。
地球環境のために今の自分の職業を投げ打つことができる人間など、ほんのわずかしかいない。百年後に人類が滅びるかもしれない可能性を減らすために、明日の自分の食いぶちを捨ててしまう馬鹿がどこにいるのか。
生物由来エタノールは、社会に対してそういう犠牲を要求することなく、二酸化炭素の削減を行なうことができるという点で非常に優れているのだ。
この論文で示されているレベルで健康被害が多少増えようとも、そもそも多少なりとも有害物質を撒き散らしている内燃機関を使い続けている我々人類が気にしても仕方のないレベルでしかない、と言えるのではないか(おそらく内燃機関を全く使わない場合に減るであろう死者数と比較して、1%未満だろう)。
もちろん、生物由来エタノールの本命はセルロースの分解によって生産できるものであることは言うまでもない。その技術が確立する前に、エタノール対応の自動車インフラが少しずつでも増えていくことが、現状のトウモロコシ由来エタノールの役割だと私は思う。

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